ワンランク上のシステムトレード

財務格付け″は、銀行や一般企業の経営の安全性(危険性)を示す指標で、それが最高位のAAAであれば「とても安全で経営破綻(倒産)2%高いという条件のちがいは納得できるものであり、単純に金利の高さをみただけではAとBの優劣はつけがたい感じがします。
大切なおカネを預けるのですから、少しでも安全性が高い銀行に預けたい気がしますが、そもそも、銀行の財務格付けが書かれていない預金広告は多いので、その銀行の安全性がよくわからないときには、自分で調べるべきでしょう。
確かに、財務格付けの記述がある広告の方が親切でしょうが、この点も決定的な差にはなりません。 ここでは、説明の都合上、Bの広告を出している銀行も健全な経営状態にあると仮定しましょう。
Aの方が圧倒的に不利な商品ですから、Bに預けるべきです。 インターネットが利用できないとか、500万円を超える金額をまとめて預けたいなどの理由でBに預けられない人も、Aに預けるべきではありません(これが強調したくて出題したクイズでした)。
最大のポイントは、やはり、それぞれの広告の下側に小さな文字で書かれた注意事項の中に隠されています。 Aが「満期前の中途解約が一切できません」となっているのに対し、Bでは「中途解約すると、普通預金金利が適用されます」となっています。
すぐには納得できない読者もいるでしょうが、このちがいは大変に重要なちがいなのです。 順を追って解説しなお、ここで損をする″と言っているのは実質的に損をする″という意味なのですが、経済が苦手な読者には慣れない考え方かもしれないからです。
なお、これ以降しばらくの説明では、話を簡単にするために、利息にかかる税金については考えないことにします。 日本国内で売られているさまざまなモノやサービスの価格について、平均的な動向(変化)をみるために工夫された指標を物価″と呼びます。
そして、物価が上がり続ける現象がインフレです(それぞれ、物価指数とインフレーションが正式な呼び方です)。 仮に、物価が毎年5%ずつ上昇する状況を考えてみましょう。

説明をわかりやすくするために、代表的なモノとしてクルマの価格に注目します。 現在100万円のクルマが、毎年5%ずつ値上がりするのですから、5年後には128万円出さないと買えなくなります。
これがインフレです。 中途解約ができないAの預金に預けると、インフレが起きたときに大損する危険性があります。
他方、Bの預金は中途解約ができるため、その危険性はずっと小さいと考えられます。 なお、「100万円の5%は5万円で、5年間の値上がりだから5倍して、25万円の値上がり」と計算した人もいるでしょうが、実際には複利″効果が働くために、28万円の値上がりになります。
1年目は100万円の5%で、5万円の値上がりになるのに対し、2年目は105万円に値上がりした状態を基準に、その5%で5万2500円の値上がりが生じるといったように、計算しないといけないからです(100万円に1.05を5回掛けると、約128万円になります)。 これを複利計算と呼びます。
現在100万円のクルマが5年後に128万円に値上がりすると予想されるなら、現在の100万円と5年後の100万円は、表面上は同じ金額ですが、「どれだけのモノが買えるか」という基準で評価すれば、まったく価値がちがいます。 同じクルマ一台が買えることを基準にすると、現在の100万円と同じ価値をもつのは、5年後では128万円になります。
逆算すると、5年後の100万円では、現在78万円で売っているモノしか買えません(100小128×100U78)。 まとめると、インフレが生じて毎年5%ずつ物価が上がると予想される場合には、5年後の100万円は現在の78万円と同じ価値しかないと覚悟すべきなのです。
これが実質″の価値を考えるということの大まかな意味です。 インフレが生じる状況下では、100万円の現金をじっと金庫に入れて保管しておくと、表面上の損はなくても、その100万円で買えるモノで測った価値が下がることで、実質的に大損する危険性があります。
年5%のインフレが10年続くと、先のクルマは163万円に値上がりすることになり、10年後の100万円は現在の61万円と同じ価値しかなくなります(100十163×100U61)。 年10%のインフレが生じる場合も示されていますが、100万円を金庫に入れておいただけでは、5年後には現在の62万円と同じ価値に、10年後には現在の39万円と同じ価値にまで目減りすることがわかります。

「現金はインフレに弱い」と言われるのは、このような事情があるためです。 ところが、「現金や預金(貯金)はインフレに弱い」といった話をする人もいます。
似たような主張ですが、こちらは正しくありません。 現金がインフレに弱いのは明らかですが、預金はインフレに弱いとは限らないからです。
たいていの預金には金利がつきます(金利がつかない預金もありますが)。 いまはほとんどゼロに近い金利しかつかず、その点では現金とさほど変わりがないと思う人もいるでしょうが、金利がつくかつかないかの差は大きいのです。
そして金利についても、物価との関係で考える必要があります。 経済用語としては、預金やローンなどの表面上の金利のことを「名目金利」と呼びます。
これまでの広告でみてきた「年10%」とか「年5%」といった金利は、すべて名目金利になります。 たとえば、1年後までに物価が5%上昇することが予想されている場合、1年もの定期預金に預けて1%の金利(名目金利)がついても、差し引きでは、1年後に4%分の価値の目減りが起きます。
このように「名目金利」から「予想されるインフレ率(物価上昇率)」を差し引いた値を「実質金利」と呼びます。 本当はもう少し面倒な計算をして求めるべきですが、金利とインフレ率がともに10%未満であれば、この計算式で十分です。
名目金利は1%でも、5%のインフレが予想されれば、実質金利はマイナス4%になってしまう、といったように考えてください。 定義をもう一度書いておきます。
名目金利が、もし、予想されるインフレ率より低いとしたら、カネを貸す側や預金をする側は、実質的に損をすることが予想されます。 でも、経済オンチの人ならともかく、銀行などの金融取引のプロが、そんな条件でカネを貸すことがありうるでしょうか。

いいえ、銀行は予想されるインフレ率よりも高い金利でカネを貸すでしょう。 そのため、経済についての基礎知識をもち、合理的に行動しようとする人や企業が金融取引をする際には、実質金利はプラスになるはずです(政府が金利について、上限規制などの変な法的規制をするケースは除きます)。
金利の決まり方としては、@借り手と貸し手の相対関係(経済用語では需要と供給の関係と表現します)に応じて、まず実質金利が決まり、A予想されるインフレ率がその実質金利に上乗せされて、名目金利(私たちが預金やローンの際にみる表面上の金利)が決まる、といった感じで理解すると、本質が理解しやすくなります。 もちろん、現実の取引では実質金利や予想されるインフレ率は明示的に出てきません。

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